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「社会が求める高等教育の質保証を考えるー学修成果の可視化・卒業時の質保証ー」参加報告

17 4月 19
ap_kanrisya
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  1. 日 時 平成31年2月20日(水) 13:00〜16:30
  2. 場 所 大阪工業大学 梅田キャンパス3階 常翔ホール(大阪府大阪市北区茶屋町1番地45号)
  3. 参加者 有馬 正人,近藤 亮介
  4. 主 催 大学教育再生加速プログラム テーマⅡ・テーマⅤ採択校
  5. 報告者 近藤 亮介
  6. プログラム
  • 開会挨拶 北九州市立大学 副学長 柳井 雅人 氏
  • 来賓挨拶①  一般社団法人 大学資産共同運用機構 理事長,日本私立学校振興・共済事業団 前理事長, 平成29年度 大学教育再生加速プログラム(AP)委員会 委員長
    河田 悌一 氏
  • 来賓挨拶② 文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学改革推進室 改革支援第二係長
    河本 達毅 氏
  • 基調講演 「内部質保証システムと学修成果の可視化による教育の質保証に向けて」
    (大阪大学 高等教育・入試研究開発センター センター長 教授 川嶋 太津夫 氏)
  • 事例報告
    【テーマⅡ】「『NIIT達成度自己評価システム』の活用による学生および教学のPDCAサイクルの構築」
    飯野 秋成 氏(新潟工科大学 工学部工学科 教授)
    【テーマⅤ】「テーマⅤ採択校のディプロマ・サプリメントの表示項目と活用」
    中村 信次 氏(日本福祉大学 AP事業推進委員長 教授)
  • 調査報告 「ディプロマ・サプリメント(学修履歴証明書など)に関する調査報告〜社会側の反応から〜」
    松村 直樹 氏(株式会社リアセック 代表取締役CEO)
    大阪市立大学 西垣 順子(大学教育研究センター准教授),佐々木 洋子(大学教育研究センター特任助教)
  • パネルディスカッション 「社会が求める大学教育〜AP事業の成果と今後の方向性〜」
    コーディネーター 椋平 淳 氏(大阪工業大学 教育センター長 教授)
    パネリスト 河本 達毅 氏(文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学改革推進室 改革支援第二係長)
    川嶋 太津夫 氏(大阪大学 高等教育・入試研究開発センター センター長 教授)
    松村 直樹 氏(株式会社リアセック 代表取締役CEO)
    飯野 秋成 氏(新潟工科大学 工学部工学科 教授)
    中村 信次 氏(日本福祉大学 AP事業推進委員長 教授)
    • 閉会挨拶 日本福祉大学 副学長 山本 秀人 氏

7. 当日の内容
開会にあたり,北九州市立大学 副学長 柳井 雅人 氏より,社会が求める高等教育の質保証のため,社会とのつながりを意識した取り組みを行っていく必要性が指摘された.また,テーマⅡ・Ⅴの情報共有によって,各大学の取り組みがレベルアップすることを今回のシンポジウムの重要な意義として挙げられていた.

来賓挨拶では,一般社団法人 大学資産共同運用機構 理事長の河田 悌一 氏より,各大学の取り組みにおける努力の見える化が重要であるとのお話があった.文部科学省 高等教育局 大学振興課 大学改革推進室 改革支援第二係長の河本 達毅 氏からは,学修の成果を学生自身が実感できるようにすることが重要であると指摘された.また,科目レベル,プログラムレベル,機関レベルの3つのレベルを意識した質保証サイクルの重要性についても説明があった.近年,大学教育への評価が厳しくなっている点については,従来のように知識を与えるだけでは不十分で,活躍するための教育が必要であるとの説明があった.また,そのための大学教育改善の取り組みの中で明らかになるものは「課題」といったネガティブなものではなく,「挑戦」であると捉え直してほしいとのことであった.そしてその取り組みについては,社会との接続を意識し,説明責任(アカウンタビリティ)を果たすことが重要であると説明があった.大阪大学 高等教育・入試研究開発センター センター長 教授の川嶋 太津夫 氏からは,高等教育の質保証における「質」には,卓越性があること,目的に合致していること,学生への付加価値(成長),基準を達成すること,等があり,区別して考える必要性が指摘された.また,内部質保証は3層構造となっており,大学内部質保証,外部質保証,質保証機関の質保証によって達成されるとし,ゴールを意識したPDCAが重要とのことであった.学修成果の可視化では,アセスメント(情報収集・分析,期待される学修成果を獲得しているかの検証等)では不十分で,エバリュエーション(アセスメント結果の解釈と意思決定)まで行う必要があると説明があった.前段階となるアセスメントでは,クラスルーム(個人毎すべてデータ収集),プログラム(代表となるサンプルのデータ収集),大学(代表となるサンプルのデータ収集),のレベルがあるとし,データ等のエビデンスに基づく意思決定が必要とのことであった.

テーマⅡの事例報告では,「『NIIT達成度自己評価システム』の活用による学生および教学のPDCAサイクルの構築」と題して,新潟工科大学 工学部工学科 教授の飯野 秋成 氏より発表があった.「学生のPDCAを,常に身近でサポートする」,「助言指導に生かす」,「保護者も巻き込む」という設計思想のもと,システムを開発し,教学マネジメント等にも活用しているとのことであった.

テーマⅤの事例報告では,「テーマⅤ採択校のディプロマ・サプリメントの表示項目と活用」と題して,日本福祉大学 AP事業推進委員長 教授の中村 信次 氏より発表があった.学修成果の可視化として,アセスメント・テストやルーブリックの活用事例の紹介,ディプロマ・サプリメントの事例等,採択校の取り組みが紹介された.また,指標づくりが進むことによる教員の負担増加等も課題であるとの説明があった.

調査報告では,「ディプロマ・サプリメント(学修履歴証明書など)に関する調査報告〜社会側の反応から〜」と題して,株式会社リアセック 代表取締役CEOの松村 直樹 氏よりお話があった.企業の人事担当者に対し,ディプロマ・サプリメントのサンプルを示し,このような書類を選考で使おうと思うか,という調査を行うと,評判が特別悪いわけではないが,本当に使えると言ってくれるのは2〜3割であるとの結果であったことが示された.人事担当者としてのリスクを冒してまで,活用しようと思うものではないとのことであった.一方,採用コンサルタント等,立場の異なる者への調査を行うと,客観的な「コンピテンシー」の評価結果や「成長行動履歴(ポートフォリオ)」等は使える,と反応があったとのことであった.このような指標を盛り込んだディプロマ・サプリメントであれば,コンピテンシー等が共通言語となり,企業側が主導権を握ってスムーズに面接を進められる点が評価されているとのことであった.ディプロマ・サプリメントの企業での活用シーンとしては,現在の大学からは十分に情報発信されない学生の態度・能力についてより適切に把握し,時間と費用の制約の中で採用活動を有利に進めること,人材育成を効果的に行うこと,等に利用されるとのことであった.人材育成の観点では,実際に有名テーマパークを運営する企業や大手自動車会社等はジェネリックスキルを柱とした能力開発と測定評価を行う若手キャリア開発モデルを採用しており,コンピテンシーやポートフォリオの情報は有用とのことであった.現代の若手社員は一つの企業固有の能力開発よりも汎用的に活躍できる能力開発を望んでいる傾向にあるとも説明があった.その点で,ディプロマ・サプリメントは求められる能力開発に役立つ可能性があるものの,今後は大学が主体となってディプロマ・サプリメントを継続活用するための第三者機関を設立する等の工夫(産学連携のための新しい社会システムの確立)が求められることも指摘されていた.

20190220 会場写真