大阪府立大学・大阪市立大学・関西大学AP合同フォーラム

大阪府立大学・大阪市立大学・関西大学AP合同フォーラム

「今,あらためて学修成果とは何かを問う:第3期認証評価の先のFDを目指して」参加報告

1. 日 時 平成31年2月9日(土) 13:00〜17:30

2. 場 所 関西大学梅田キャンパス

3. 参加者 近藤 亮介

4. プログラム

・開会挨拶 関西大学 学長 芝井 敬司 氏

・趣旨説明 大阪府立大学 副学長 高橋 哲也 氏

・基調講演「学習成果とは何かーその評価と教育・学習改善への活かし方ー」

(京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授 松下 佳代 氏)

・事例報告

関西大学 岩崎 千晶(教育推進部准教授),多田 泰紘(教育推進部特別任命教授)

大阪府立大学 星野 聡孝(高等教育開発センター長),畑野 快(高等教育開発センター准教授)

大阪市立大学 西垣 順子(大学教育研究センター准教授),佐々木 洋子(大学教育研究センター特任助教)

・パネルディスカッション

コーディネーター  森 朋子(関西大学 教育推進部 教授)

パネリスト       岡田 忠克(関西大学 学長補佐)

高橋 哲也(大阪府立大学 副学長)

飯吉 弘子(大阪市立大学 大学教育研究センター 教授)

松下 佳代(京都大学 高等教育研究開発推進センター 教授)

・閉会挨拶 大阪市立大学 副学長 橋本 文彦

 

<当日の内容>

開会にあたり,関西大学学長の芝井 敬司 氏より,高等教育のグランドデザインに関する答申を踏まえ,学習者本位の教育への転換や認証評価の有効活用等の重要性が改めて確認された.

大阪府立大学副学長の高橋 哲也 氏の趣旨説明においても,認証評価の有効活用について強調されていた.具体的には,評価結果の良し悪しだけで終わらせないこと,学修成果を可視化して満足しないこと等を挙げられ,「何のために行っているのか(教育と学生にとっての学修がよりよくなるため)」を常に考える必要性が確認された.

京都大学高等教育研究開発推進センター教授の松下氏より,「学習成果とは何かーその評価と教育・学習改善への活かし方ー」と題して基調講演があった.学習成果としては,単なる「学習の結果」ではない事に加え,「期待される学習成果」とそれが具体化した「到達した学習成果」に分類でき.前者がコンピテンス,後者がいわゆる学習成果であるとの説明があった.その評価方法も多様化しているが,「直接評価と間接評価」「量的評価と質的評価」「科目レベル・プログラムレベル・機関レベル」の3軸に評価方法を分類することで解釈しやすくなるとのことであった.なお,直接評価は「何を知り何ができるか」を評価し,間接評価は「何を知り何ができると思っているか」を自己報告したものを評価することを指しているようであった.3つの評価軸の関係性や各評価指標の位置づけは以下のようになると説明があった(図1・2; 当日配布資料より引用).

学習成果の評価としては,科目レベル(科目成績等)の評価よりもプログラムレベルの評価が難しいことを指摘された.具体的には,質問紙による評価では学生の自己報告(間接評価)であって直接評価の代わりにはならないこと,民間の標準テストを使ってもその大学の分野に合致する指標とならない可能性があること,等が指摘されていた.それに代わる方法として,Pivotal Embedded Performance Assessment(PEPA)が有望な方法論であると紹介された.具体的には,「重要科目でパフォーマンス評価を行うこと」を指していた.パフォーマンス評価の方法としては,1)大学学習法によるレポート評価(ライティング・ルーブリック評価),2)PBLにおける問題解決能力の評価,3)シミュレーション形式での能力評価,4)実習におけるポートフォリオ評価とパフォーマンス評価,等に要約できるようであった.

その他には,大学毎の様々な取り組み事例が報告された(資料参照).特に,大阪府立大学では,アクティブ・ラーニングをICTで支援することを目的に開発された「meaQsシステム」が紹介された.このシステムでは,学んだ知識を実際に活用して学生自身がテスト問題を作問し,作った問題について学生間で「いいね」ボタンを押したり,コメントできたりする機能が搭載されていた.これにより,知識の内化と外化を促すことができると説明があった.作問した学生には,成績評価としてのインセンティブもあるようであった.作問した問題は集約され,実際に学生が解答し,分析の結果から良問が蓄積され,公認心理師資格試験対策にも使えるようにする試みを行っているとのことであった.Moodleを利用している大学の教員なら誰でも無料で使用できるとのことで,詳細はHP(http://www.ess.osakafu-u.ac.jp/human/okamoto/squish/)に紹介されている.